以前のリビジョンの文書です


研究内容

アウトライン

物質の示す性質の大部分は電子が担っていると言っても過言ではありません。金属、半導体、絶縁体など伝導特性に物質中の電子が係わっていることは想像しやすのですが、磁石に付く、付かないといった性質も電子の運動がその起源になっています。私たちはその磁気的な性質を磁性と呼び、様々な手法を駆使して物質中の電子状態を調べています。
磁性と言ってすぐ頭に浮かぶのは、室温で磁石に付く強磁性体である鉄・コバルト・ニッケルが属する遷移金属元素ですが、希土類元素も強い磁性を有する元素群です。希土類とはLa(ランタン)からLu(ルテチウム)の15種類のランタノイドにSc(スカンジウム)とY(イットリウム)を加えた17種類の元素群の呼称です。希土類の特長は磁性を担う電子軌道が原子核の周辺に存在しているため、外側からの影響を受けにくい点にあります。そのため、遷移金属とはまた違った磁性が現れ、その特長が生かされた永久磁石などが我々の日常生活で用いられています。

1                                  18
1
H
2                     13 14 15 16 17 2
He
3
Li
4
Be
                    5
B
6
C
7
N
8
O
9
F
10
Ne
11
Na
12
Mg
3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13
Al
14
Si
15
P
16
S
17
Cl
18
Ar
19
K
20
Ca
21
Sc
22
Ti
23
V
24
Cr
25
Mn
26
Fe
27
Co
28
Ni
29
Cu
30
Zn
31
Ga
32
Ge
33
As
34
Se
35
Br
36
Kr
37
Rb
38
Sr
39
Y
40
Zr
41
Nb
42
Mo
43
Tc
44
Ru
45
Rh
46
Pd
47
Ag
48
Cd
49
In
50
Sn
51
Sb
52
Te
53
I
54
Xe
55
Cs
56
Ba
La-Lu 72
Hf
73
Ta
74
W
75
Re
76
Os
77
Ir
78
Pt
79
Au
80
Hg
81
Tl
82
Pb
83
Bi
84
Po
85
At
86
Rn
87
Fr
88
Ra
Ac-Lr 104
Rf
105
Db
106
Sg
107
Bh
108
Hs
109
Mt
110
Ds
111
Rg
112
Cn
113
...
114
Fl
115
...
116
Lv
117
...
118
...
 
ランタノイド 57
La
58
Ce
59
Pr
60
Nd
61
Pm
62
Sm
63
Eu
64
Gd
65
Tb
66
Dy
67
Ho
68
Er
69
Tm
70
Yb
71
Lu
アクチノイド 89
Ac
90
Th
91
Pa
92
U
93
Np
94
Pu
95
Am
96
Cm
97
Bk
98
Cf
99
Es
100
Fm
101
Md
102
No
103
Lr

ウィキペディアの各元素にリンクしています。

当研究室では、希土類の中でも特にYb(イッテルビウム)、Ce(セリウム)、Eu(ユーロピウム)に注目しています。通常、希土類は物質中で3価の陽イオン状態を取りますが、上記の元素はそれに加えYb2+, Ce4+, Eu2+などの価数状態を取り得ます。下図にそれぞれのイオン半径の大小と磁気モーメント(矢印)の有無をイメージした図を示します。 これらの元素は価数の変化により磁性状態と非磁性状態の間を移り変わることができます。 このイオン価数は希土類イオン周りの原子配置や、圧力などの外部パラメータによって変調を加えることが可能であり、電子状態の変化が大きな物性変化を引き起こす可能性を秘めている元素群といえます。 CeやYbを含む金属間化合物では、磁性を担う4f電子と伝導電子の混成を通じて、電子の有効質量が自由電子の千倍にも達するものが存在し、格子振動を媒介にした従来型とは異なる超伝導状態を示す物質も多数報告されています。

イオン半径と磁気モーメントの有無

さて、これらの物質の詳細な研究を行うためには純良な結晶試料、特に結晶方位に関する異方性の情報が得られる単結晶試料の作成が大事です。我々は、新物質の単結晶試料の作成に力を入れた研究開発を行っています。 研究の目的は、新しい物質中で実現する新しい電子状態の探索ですから、そのためには希土類と様々な元素の化合物を作成する必要があります。しかしながら、扱いづらい元素も存在し、それを含む化合物群は研究がなかなか進展しないのが現状です。例えば、希土類ではYb, Euが蒸発しやすいため、化合物の作成報告が少ない元素です。また、化合物を形成する相手方の元素としてはP(リン)、S(硫黄)なども扱いが難しい元素です。上記を含む物質は希土類金属間化合物の作成に広く用いられるアーク炉 (試料作製装置参照) などでは難しく、狭い空間に閉じこめた上での熱処理が必要となります。そのため、我々は高融点金属であるモリブデンやタングステンで試料容器を作製し、その中に密閉して熱処理をする方法を取っています。試料原料を密閉したモリブデン容器を高周波炉にて加熱している様子は 試料作製装置のページのようになります。 この方法以外にも、低融点金属である錫、鉛、リチウムなどを溶媒としたフラックス法やヨウ化カリウムなどを輸送剤とした化学輸送法で純度の高い単結晶試料の作成を行っています。研究室でこれまでに作成した単結晶試料の一部は 結晶ギャラリー を見て下さい。どれも単結晶試料としては世界初になります。

研究トピック

  1. Yb5Ge4における価数秩序構造に伴う低次元磁性 [工事中]
  2. RPd3S4における多極子相互作用 [工事中]
  3. 2次元三角格子を持つフラストレーション化合物YbAl3C3におけるスピン一重項基底状   [ 解説 ]

研究ノート

  1. 高周波単結晶育成炉の温度校正 [ ノート1 ]
researches/start.1424396808.txt.gz · 最終更新: 2015/02/20 10:46 by kosaka
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